2016年10月09日
本日、ネットギャラリーに備前の金重有邦さんの作品を掲載致しました。
初めて金重有邦さんのところを訪れたのは、初夏にも関わらず、雨が降り、少し肌寒い日でした。
こんな日は、この茶碗で茶を飲むといい、見込みの中心から口までの距離ができるだけ長い茶碗で飲む方が茶が上手い、そうおっしゃってお薄を点てて下さいました。
一口、口に含めば、肌寒さを補うような馥郁とした香りと味わいで、なるほど、今日のような気候なら、このお茶碗の方が、より一層お茶が美味しく感じられそうです。最後にお茶をすすった後、見込みに残った温もりもまたご馳走に思えてきます。
作家さんのことろを訪れ、こうしてお茶碗を選んでお茶を点てていただいたのは、初めての経験でしたが、この一服のお茶から、とても多くのことを学ばせていただきました。
焼物というのは、すべて内側の造形でできていると、金重有邦さんはおっしゃられます。私たちは、一般的に焼物を見るとき、つい見た目の姿、形、いわゆる外側の造形に目を奪われがちですが、確かにお酒の味わいを決めるのも内側の造形ですし、焼物が単なるオブジェではなく、実際に手に取り、使われるための陶芸である以上、内側の造形にこそ、その美しさを見出すべきかもしれません。
練達した技術で作られた器は、どれも美しい内側の造形をしており、お茶を飲んでも、お酒を飲んでも美味しく、古唐津の名品とも言われるものであれば、たとえ向付でお茶を飲んでも素晴らしい味わいだと、おっしゃられます。
今回、金重有邦さんは、約2年ぶりに窯を焚かれました。齢になって、音学で言えば、最終章の第一楽章に入ったところじゃないかと、ご自身の心境を話されていましたが、拝見させていただいた作品は、どれも静かな佇まいながら、内に美しさを秘めた作品ばかりでした。
点数わずかですが、金重有邦さんの最新作となる徳利とぐい呑を紹介させていただきます。皆さま、ぜひご高覧下さい。